司書?それとも司書教諭?
司書と司書教諭。どちらを取得しようかと迷っている方のために、今回は『司書』と『公立学校の司書教諭』について探ってみました。
公立小学校教諭の経験が、あなたの決断のヒントとしてお役に立てたらうれしいです。
はじめに
今回は、私の教職体験から、私ならこう考えるというお話ししていきます。
私が住んでいる地域の公立小学校での勤務経験からであり、司書教諭の立場や職務は、どの地域でも同じとはいえず、また公立と私立でも違いがあるはずです。
今回の話は、『司書』と『公立学校の司書教諭』について書かせていただきました。
ご理解いただきお読みいただければと思います。
小学校の図書館とは
小学校の図書館は、一般的に「図書室」と呼ばれ、小学生にはとても人気のある場所です。
1年生~6年生と小学生向けの書籍のほか、幼児向けの書籍大人向けの趣味の書籍もあったりします。特に市民図書として利用されている学校では、地域の方の利用もOKなので、幅広い書籍が揃えられています。
小学校では、いろいろな機会に図書室を利用するタイミングがありますが、休み時間の図書室の利用はとても多いです。
そして、高学年の図書委員会は人気の委員会のひとつで、図書の貸し出しや整理などの仕事をしてくれます。
休み時間は、本を読みたいと思う子がほとんどですが、中には、図書室が好きといって、何となく図書室に行くという子もいたりします。
また、国語の図書の時間以外でも、資料を活用して調べ学習をするうえで、図鑑などを利用することもあり、そういった意味でも図書室は、子どもたちにはとても馴染み深い場所でもあります。
図書館はどう利用している?
次に図書館は私たちにとって、どのような存在でしょうか。
公共図書館経年変化(※1)をみると、2012年度から個人貸出数は減少傾向にあるものの、その後は大幅な変動は見られず、一定数の貸出が行われています。(※1日本図書館協会ホームページ参照)インターネット検索も多く行われている中であっても、本を求めている人は思いのほか減っていないということでしょうか。
図書館には行かないけれど、読みたいものを取り寄せることができる、図書取次サービスを利用している方もいらっしゃるかもしれませんね。
蔵書が豊富にある、ないものはないというくらいの国立国会図書館に出かけられる方もいらっしゃるかもしれません。
図書館を利用するわけは、人それぞれだとは思いますが、調べごとのために利用している方は、司書の方に相談する機会もきっとあることでしょう。
図書館にいる司書は本当に頼りになる存在です。
ところで、あなたはこんな疑問をもったことはありませんか?
学校図書館の先生は司書?図書館の司書と同じ立場?
学校図書館の司書と図書館の司書。
同じ司書ですが、学ぶ内容も役割もずいぶん違っているのです。
司書とは
司書とは、都道府県や市町村の公共図書館等で図書館資料の選択、発注および受け入れ、分類、目録作成、貸出業務、読書案内などを行う専門的職員のこと。
国家資格ですが、大学の科目履修や既定の講習を受講することで資格を取得できます。
図書館を利用するとよくわかるのですが、資料などが見つからない時には、司書の方が丁寧に検索を手伝ってくださいます。自分で調べることもできますが、そもそもどのような資料を使ったらよいかもわからない時などもあるので、解決の道筋がみえ、とてもありがたい存在です。
司書教諭とは
司書教諭とは、教員として採用されてから、その学校内の役割として次の仕事を担う教員のことをいいます。
1.学校図書館資料の選択、収集、提供
2.子どもの読書活動に対する指導
3.学校図書館の利用計画立案・実施の中心となること
4.学校図書館の運営・活用の中心となること
司書教諭は学校図書館法で、学校図書館の専門的な職務を担う教員として置かれた先生。学級数が12学級以上の学校では、必ず司書教諭を置かなくてはいけないこととなっています。
司書教諭についてはこちらの記事に詳しく記載しています。
司書教諭は、学校図書館(学校の図書室)で専門的な業務に就く先生ということですね。
司書は先生ではありませんが、司書教諭は先生です。
司書になるには
図書館法でいう司書資格は図書館法第5条に取得条件が次のように規定されています。
1.大学、短大、高等専門学校のいずれかを卒業した上で司書講習総統科目を履修する
2.大学に2年以上在学し62単位以上を修得、もしくは短期大学、高等専門学校を卒業した上で司書講習を修了する
3.司書補として3年以上勤務したうえで司書講習を修了する
※『司書補』というのは、司書の専門的職務を助ける事務に従事する資格のことです。
高等学校卒業者、中等教育学校卒業者、高等専門学校第3学年修了者のいずれかの資格を持っていれば、大学などで実施される司書補講習を受けて資格を取得することができるものです。
(文部科学省ホームページ『図書館法施行規則』より抜粋)
司書になるためのフローチャート
司書になるためのフローチャートを作成しました。
司書を目指す方は、ご自身がどのケースにあてはまるかを確認してみましょう。
詳しくは文部科学省『図書館法施行規則』で確認してください。こちらのホームページでは、取得するべき科目など詳しく記載されています。
取得方法1
取得方法1:高校⇒大学・短大卒業⇒司書講習受講⇒司書
取得方法1は『司書講習』を受講することで取得が可能です。
司書講習は大学が開催場所となり、夏季集中講座として講義に出席します。
参考として令和2年度は下記のような実施状況でした。
実施大学 | 区分 | 講習期間 | 定員 | 申込期間 | 選考方法 |
聖徳大学延期
終了 |
司書 | 7.16-9.11 | 120名 | 4.1-5.28 | 作文・書類審査 |
明治大学中止 | 司書 | 7.16-9.15 | 100名 | 4.1-5.7 | 作文・書類審査 |
鶴見大学中止 | 司書 | 7.17-9.19 | 120名 | 4.1-5.30 | 作文・書類審査 |
愛知学院大学
中止 |
司書 | 7.8-9.19 | 120名 | 4.1-5.8 | 作文・書類審査 |
桃山学院大学
変更 |
司書 | 2年12.1-
3年3.5 |
150名 | 10.12-11.4 | 作文・書類審査 |
別府大学
中止 |
司書 | 7.30-10.3 | 120名 | 4.20-6.26 | 作文・書類審査 |
令和3年(2021年)度の司書講習については、文科省のホームページに、このように記載されています。
「講習は概ね毎年7月~9月にかけて全国9大学程度で実施される集中講習で、講習では図書館に関する専門科目について学習します。講習の実施大学、期間、問い合わせ先については毎年3月下旬から4月上旬に官報に告示しています」(文科省HPより抜粋:https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/shisyo/index.htm)
司書教諭講習の受講が厳しそうな方、別の方法でとお考えの方は、大学の科目履修で取得する方法がおすすめです。
通信教育だと好きな時間に履修することができて便利です。それが次の取得方法2!
取得方法2
取得方法2:高校⇒大学・短大卒業⇒大学で必修科目履修⇒司書
取得方法2は『大学の必修科目を履修』することです。通学のほかに通信教育があります。
働きながら履修したい人は通信教育を利用している人が多いようです。
通信教育には、近畿大学・八洲学園大学などいくつかの大学があります。
図書館司書と司書教諭
図書館に勤務する『司書』と『司書教諭』の資格は、履修する内容も立場も違いますね。ここで、もう一度それぞれについてまとめてみました。
司書
都道府県や市町村の公共図書館等で図書館資料の選択、発注および受け入れから、分類、目録作成、貸出業務、読書案内などを行う専門的職員のこと。
(文部科学省ホームページより抜粋https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/shisyo/index.htm)
司書教諭
教諭として採用された者が学校内の役割としてその職務を担当し、学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導、さらには、学校図書館の利用指導計画を立案し、実施の中心となるなど、学校図書館の運営・活用について中心的な役割を担う。
(文部科学省ホームページより抜粋https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/shisyo/index.htm)
学校司書とは?
実は『司書』と名のつく仕事には、『司書』『司書教諭』の他に『学校司書』というものもあるのです。
私もずっと知らなくて、資格取得について調べている中で知り得たことでした。
学校司書
教員としてではなく、事務職員として採用された者が学校図書館に勤務する場合は『学校司書』と呼ばれる。
(文部科学省ホームページより抜粋https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/shisyo/index.htm)
つまり、小・中・高・特別支援学校にある学校図書館(通称『図書室』)の職務を担当する者は教諭の場合と事務職員の場合があるということです。
司書教諭と学校司書
「司書教諭」と「学校司書」及び司書に関する制度上の比較(文部科学省ホームページ)
という一覧表があります。それを参照に紐解くとこのような感じです。
・司書教諭は先生であることが絶対条件。
・先生として採用されてから、もしかすると司書教諭の仕事を担当できるかもしれない。
・学校に司書が必要な場合は、事務職員として採用される場合がある。その場合は教員でなくても応募することができる。
・司書は学校の図書館で働くことはできない。
少しわかりにくいですが、大事な点は、
学校図書館で働く場合、教師からのルートと事務職員からのルートがある。司書の人が学校の図書館で働くなら『司書』ではなく『学校司書』という立場の事務職員。
ということのようです。
司書教諭で働けるか
「先生じゃないので、先生って呼ばないでくださいね」
と図書室で働いていた方に言われたことがありました。
その時になぜかとたずねたら、事務職で採用されているので・・とおっしゃっていたのですが、
「でも、子どもたちは図書室の先生と思っているので、先生でいいですよ~」
と言いました。もちろん、ほかの先生方もそのつもりで、結局その方は先生と呼ばれることになったのです。
働いている職員にとっては、学校司書の方が事務職ということよりも、子どもたち目線で『先生』と呼ぶ方が、状況に適応していると思っているからでしょう。
この方のように私の周りでは、図書室にいっらっしゃる方は『学校司書』の方の方が多いように感じます。
公立小学校では、1校当たりの教職員配置人数が決まっていますから、できるだけ子どもたちに手をかけたいという想いがあります。ですので教員一人を図書室の専任にするという選択は考えにくいです。現職の先生が司書教諭の資格を取ったとしたら、校務分掌で『図書館』という役割を担わされ、『学校司書』の方との相談で仕事内容は変わるのではないかと思います。
つまり司書教諭という『専任』の先生として働くということは、かなり厳しいのでは?ということです。
司書?司書教諭?どちらを選ぶ?
司書と司書教諭は同じような仕事内容ですが、フィールドは全く別物です。
自分は図書館で誰を相手に、どのようなことをしたいかということで選ぶことが大切ですね。
とくに学校の場合は、小学生、中学生、高校生、大学生、専門学校生、特別支援学校など細かく分けられていますので。
司書教諭資格について
司書教諭の資格の取得は、どのような方にお勧めの資格なのでしょうか。
それは、ベースに教員免許ある方!
しかも比較的少ない科目履修(10単位)で『司書教諭』の資格取得ができるのが司書教諭の資格です。
けれど少し気をつけなくてはいけないこともあります。
それは『司書教諭』だからといって図書室のみの仕事として、勤務することは難しそうだということです。
もちろん、教職ではなく事務職として『学校司書』の枠で応募し、採用される可能性はあると思います。そのときに役立つように『司書教諭』の資格を取得するのはいいかな?と思います。ただしその場合は『教諭』ではありませんので、給与等も違ってきます。
『司書教諭』の資格を取得し『司書教諭』として採用されても、『司書教諭』の資格を取得し『学校司書』として採用されても、仕事内容には変わりはないのに、採用される立場が違うだけで給与等がちがっても納得できるかな?それでも学校図書館で働きたいかな?と自分に問いかけてみることは必須だと思います。
まとめ
今回の記事は、私の置かれている立場やこれまでの経験から選択した『司書』と『司書教諭』の資格取得についてお話させていただきました。
個人的な考えなのでお役に立つかわかりませんが、調べた内容は文科省などの資料をもとにしております。コロナ禍で講習などが今までとは違ってくることもあるかもしれません。今年は特にしっかりと下調べが必要ですね。
司書と司書教諭、どちらの資格を取得する?
その答えを見つけ出すには、どのように働きたいかを考えることが大切です。
どちらを選択するにしても、今はインプットの環境が整っていますので、ぜひ何かチャレンジしたいものです。
そしてそれをアウトプットできる人になれたらきっと楽しいはずです!
https://www.yashima.ac.jp/univ/
図書館司書資格取得については、こちらの記事もどうぞ。